この用語解説は、本文の説明のために付しました。
一部、加筆したところはありますが、内容はほとんど『表具-和の文化的遺伝子』からの抜粋です。 表具関連の符丁、用語はここに紹介したものの他に、まだまだ多くあります。
アール(アール)
radius(=半径)の頭文字。丸みを表すときの符丁。
浅葱(アサギ)
藍染による色目の一つの呼称。薄いネギの葉の色の意で、緑がかった薄い藍色をいう。
衣裳屏風(イショウビョウブ)
衣裳をそのまま裏打し、これを絵に描いた衣桁へ、あたかも掛けたように押して仕上げた屏風。今日では、単に衣裳を貼った屏風もこう呼ぶことがある。なお、よく混同されるものに「誰ヶ袖屏風(タガソデビョウブ)」がある。これは『新潮世界美術事典』によると「華やかな衣裳を衣桁に掛け並べた図の屏風」であり、「近世初期風俗画の一画題として江戸初期に流行した」もの。そして、古今集の「色よりも香こそあはれとおもほゆれ たが袖ふれし宿の梅ぞも」という古歌の意をくんで図にしたものといわれる。
一文字 (イチモンジ)
本紙の上下に付ける、あるいは様式によっては本紙を取り巻くように付ける部材の部位名。なお、本紙を取り巻くものを特に「一文字廻(イチモンジマワシ)」という。
一文字風帯(イチモンジフウタイ)
垂風帯(サゲフウタイ)の様式の一。表裂を一文字裂と同じ表具地でつくり、裏裂には一般に天地裂と同じものを用いて作ったもの。略して「一風(イップウ)」と呼ぶことがある。
伊予簾(イヨスダレ)
本来の伊予簾とは小石畳文と宝尽し文を裏組織で表した経縞物を指し、これは小堀遠州が命銘した「伊予簾」という茶入の仕覆に添えられたことが名称の由来。表具専用裂としての伊予簾は、これを模作した正絹縞物をいう。
入れ子(イレコ)
透明ダストカバーと中縁が接しないようにするのが目的の、小さい縁。入れ子は通常、中縁と共(同じ表具地、あるいは塗装)にする。これを「共入子」と呼ぶ。なお、入れ子の中でも断面形状が1/4円形になっているものを、特に「雲桟」と呼ぶことがある。また、油彩画用の入れ子はオイルライナーと呼ぶこともある。→スペイサー
浮かし張り(ウカシバリ)<br>画仙紙など和的な額装本紙に洋風の演出を与えるためのテクニック。目線高に掛ける洋間では、平面的な面一額装では映えにくいことから。浮かし張りは一般に、パネル等の腰高の台へ本紙を張り、これを縁貼下地に取り付けた、すなわち本紙が縁よりも前面へ位置する立体的な仕様をいう。なお、額装に限らず表具品における立体仕様はそれまでの日本になかった感性から生じたものであり、また浮かし張りは本紙と縁が一体化することから、和的作品の洋室への擦り合わせには好適である。なお、こうした浮かし張り仕様は、陶板や木口を処理した漆芸作品、あるいは四角形でない変形本紙の額装にも適している。
裏板(ウライタ)
額の裏側を保護するもの。多くはベニヤ板など合板を使用する。「バックボード」ともいうが、埃や虫の侵入を防ぐ機能からダストカバーとも呼ばれることがある。
雲母 ウンモ
岩絵の具の一種。キラ、あるいはキララと呼ばれ、透明または半透明の白雲母を砕いてつくられる白色(銀灰色)顔料。半透明であることから白い絵具としての効果は小さいが、他のどの顔料ともよく混ざり、混和させると元の色に柔らかさや真珠のような光沢を付与することができる。このような性質を利用し、日本画の顔料としてだけでなく、揉紙(モミガミ)や唐紙(カラカミ)の顔料として用いられる。
大縁 オオベリ
一般に屏風装で、本紙と椽(フチ)の間に装飾として貼るものであり、手当りに対する保護をも兼ねるもの。他に屏風縁には小縁(コベリ)があるが、これは大縁と本紙との間に貼る細い表具地で、装飾目的の縁を指す。
押す オス “押す”には、そもそも“物にはりつける”という意があるが、表具、ならびに関連業界では、小さい面積のものを大きな面積のものへ貼るときに多く“押す”と表現する。「金箔を押す」、「色紙を押す」、「押絵(オシエ)」などと用いる。
カカリ カカリ 下地などの対象物を受ける目的で、椽枠端先の下を决って窪みをつけた部位。シャクリ(决り)、あるいはこれが訛ってサクリともいう。他に「枕」とも呼ぶことがある。→フカミ
額装 ガクソウ
額装という言葉は戦後に生まれ、1960年代以降に定着した用語。額装とはもちろん額の計画あるいは製作技術を意味するが、額椽装着の略ともいわれている。なお、額装という語は洋額装、和額装というように区別して用いることが普通である。
掛緒 カケオ
掛物を吊り下げるとき床釘へ掛ける紐。展開時には掛物全体を支える。この掛緒には収納時に巻き留めるための「巻緒(マキオ)」と呼ぶ紐を取り付ける。
錺金具 カザリカナグ
本来は、建築・家具・什器などの保護補強に用いる金物のこと。しかし、次第に主目的が装飾に移ったことから、カザリ金具と呼ぶようになった。
加飾紙 カショクシ
加飾とは装飾加工を意味する近年の造語であり、加飾紙とは紙にさまざまな技法を駆使して装飾加工した紙をいう。これに対し、加飾していない生成りの紙を「素紙(ソシ)」という。なお、素紙のほとんどが加飾紙のベースになる。
画仙紙 ガセンシ
紙本として、書画ともに最も多く用いられる支持体。画仙紙の大きさは漉き元によって若干の相違はあるが、4尺5寸(約136cm)×2尺3寸(約70cm)が一般的。
勝手屏風 カッテビョウブ
勝手許に立てる屏風。勝手許とは台所に関係のあることをいい、すなわち勝手屏風とは今日、座敷での下座、あるいは客人のあるとき台所へ向かう通路を隔てたいときなどに用いるもの。
角組 カドグミ
木材表具地の留(トメ)部分における形状の名称の一。平留による留加工をしたもののうち、内隅、外隅ともに直角を現すもの。
角丸 カドマル
木材表具地の留(トメ)部分における形状の名称の一。平留による留加工をしたもののうち、内隅は直角だが、外隅にアールをとったもの。なお、日本以外ではあまり見られない留部分の加飾であり、和風表現に適している。
金軸 カナジク
主に仏仕立で用いる金属製の軸端(ジクハナ)。彫りや、まれに象嵌などを施してさまざまに加飾される。
紙番 カミツガイ
連接部分の隙間を無くすために開発された紙製の番、あるいはその工法。小さく切った紙を連接させる対象物に、それぞれ互い違いに張って組み、番の役目を果たさせるもの。中国にはなく日本のオリジナルという説が有力。
唐紙 カラカミ
唐紙とはそもそも中国から輸入されたあらゆる紙を総称する語だが、次第にその中の優美な模様入りの紙だけを唐紙と呼ぶようになる。今日、唐紙は襖の上貼紙の中でも、主に雲母を用い、これを木版画技法でプリントした紙を指す。なお、このことから「雲母刷り(キラズリ)」と呼ぶこともある。→雲母
唐木 カラキ
紫檀・黒檀・花梨・鉄刀木(タガヤサン)などの伝統的な輸入材のこと。今日、表具地として用いる唐木材は黒檀と紫檀がほとんどである。なお、唐木という名称は、奈良時代に遣唐使が唐の文化とともに当時の珍しい木材と木製調度品を日本へ持ち帰り、これらを総称して唐木と呼んだことがその始まり。また、唐木は当初、3種であったことから唐三木とも呼ばれた。このうち黒い木が黒檀、朱紫色の木が紫檀と名付けられ、最後の一つが白檀である。これは白色ではないが、前二者に比較すれば白いことから、あえてこう呼ぶようになった。しかし、白檀は表具地としては伝統的にあまり用いない。
仮椽 カリブチ
枠のみの額を指し、主に展覧会などで使用されるもの。ダストカバーを使用しないことから、作品の保護には向いていない。「仮枠」、「仮額」ともいう。
雁皮 ガンピ
和紙の三大原料の一。雁皮は沈丁花科の落葉低木で、古代より日本独特の製紙原料として使用されている植物。雁皮繊維は細くて短いのだが、精選した繊維が平滑で半透明であることから成紙は優美な光沢を持ち、防虫性・防湿性に優れ、しかも粘着性に富むという特長を持つ。ただ、雁皮は成育が遅い上に栽培が難しく、したがって野生のものを採取して利用せざるをえないことから、製紙原料としての供給量は多くない。
機械表装 キカイヒョウソウ
熱圧着紙を用い、専用熱圧着機で裏打をする仕方。
絹絓 キヌシケ
絓の中でも目の粗いものを上貼用に裏打したもの。現在では主に裏打をして襖の押入や屏風などの裏貼に用いる。絓引紙(シケビキガミ)ともいう。
経師 キョウジ
主に関東地方における表具師の別称。経師とは奈良時代まで、写経をする者の称であったのだが、以降は次第に掛物の表具や巻子本(巻物)・綴本の装幀のほか料紙づくり、さらには衝立・屏風・襖の仕立に至るまで、およそ紙と裂と糊を用いてつくるものすべてが経師の仕事とされるようになったことが、今日での表具職に携わる者を経師とも呼んでいる経緯である。
行の仕立 ギョウノシタテ
軸装における三大大和仕立の一。表紙は一文字・中廻し・天地・風帯で構成される。行の仕立は、特に大和仕立(狭義)・大和表具と別称があるように、純日本式の様式として最も広く用いるもの。古くは幢補(ドウホ)仕立とも呼んだ。
行の真 ギョウノシン
大和仕立における行の仕立の一つ。天地があり、一文字・中廻しが本紙を取り囲む様式で、風帯は一文字風帯。用途は、神官仕立と別称があるように、今日ではほとんどが神道関係のもの。
行の草 ギョウノソウ
大和仕立における行の仕立の一つ。[行の行]の形より一文字または風帯、あるいは両方を取り払った形のものだが、多くは風帯を残す。このとき垂風帯を付ける場合は中風帯にする。これは、たとえば美人画などの風俗画や淋派系の装飾絵画のように、町家方絵画の格が下がるとされるものなどに用いる。
曲 キョク
屏風1本(半双)における構成枚数。たとえば、屏風を構成する1面を「扇(セン)」と呼ぶが、2扇屏風であるなら二曲(あるいは両曲)、6扇であるなら六曲という。なお、曲の呼称は中国に始まり、日本では曲の代わりに枚折(マイオリ)という語も使う。『?具の栞』によると「(曲の字は)六枚折では文語にならぬところから中国を真似たのであるが、今日では一般の用語となった」とある。
裂 キレ
表具地として使用する織物のこと。一般に織物のことをキレともいうが、キレとはそもそも物の切れ端の義であり、織物も長尺物から必要に応じ切り取って利用することから、その切り分けたパーツをキレと呼ぶようになったことが、この呼称の始まり。このキレには、その意を汲んで「切」という字を当てることが通常だが、古い巻物などの断簡へは、一般に古筆切や歌切など「切」の字を当てる。したがって、これとの混同を危惧し、キレが織物の場合は「裂」という字を当てることが普通である。なお、裂地は厳密にいえば織物地という意だが、今日では裂と同じ意味で使用することが業界では一般的である。
金屏風 キンビョウブ
日本独自の、祝儀事の際に背障として用いる金箔を貼った屏風。
金襴 キンラン
綾織あるいは繻子織の地組織に、平金糸で文様を織り表した裂地。金糸に本金箔を使用したものは本金欄、合金箔のものは合金襴などと区別する。ちなみに、金襴緞子は「金襴や緞子」を意味し、ともに高級織物であるところから、金襴緞子という併称は高価な織物の意にも用いられる。
硯屏 ケンビョウ
主に額装に用いる、小衝立のこと。もともとが硯の屏風(中国では衝立の意)ということで、卓上で用いる硯用の風除けを目的とする小衝立を意味したが、近年になり硯屏形式で小作品を額装仕立することが流行したことによって定番となったもの。硯屏は自立することから現在では飾り棚や玄関の靴箱の上などにも装飾品として用い、色紙を入れ替え可能にしたものも多く製されてきた。なお、硯屏は形状において額とは呼びがたいが、額装仕立したものは装飾以外の実用的な機能を持たないことから和額の一種とされる。
絹本 ケンポン
絹を支持体とする本紙のこと。キヌホンともいう。揮毫用の絹には平織にしたものと繻子織にしたものがある。これらを総称して絵絹(エギヌ)というが、使用状況から現在では絵絹イコール平織絹と考えて間違いはない。なお、ヨーロッパでは支持体としての絹の用例はほとんどないが、逆に極東ではごくありふれたもので、その歴史も中国の唐代にまで遡るといわれる。日本では平安時代以降に普及する。→紙本
楮 コウゾ
和紙の三大原料の一で、今日、和紙の抄造に最も多用されるもの。というのも、桑科の楮は、栽培が容易で毎年収穫できるからである。さらに、この楮から得る繊維は太くて長く、また繊維の絡み合う性質が強い特長があり、その成紙は粘りがあり揉んでも破れにくく、耐久性がある強靭な紙をつくるのに適しているからである。
絖本 コウホン
絹本の一。絵絹(揮毫用の絹)のうち、繻子織にしたものを絖(ヌメ)といい、これを支持体としたものを絹本の中でも特に絖本と呼ぶ。→絹本
垂風帯 サゲフウタイ
→風帯
三六 サブロク
わが国の寸法体系により生まれた規格寸法(モジュール)の呼称で、3尺×6尺(約91㎝×約182㎝)のこと。ほぼ畳一枚の寸法が基準となっていることから、日本人にとって極めて馴染みやすいモジュールとなっている。
直椽 ジカブチ
マットやライナーを入れずに額装すること。あまり一般的な用語ではないが、業界ではしばしば用いる符丁。
色紙 シキシ
作品の支持体として規格化された板紙。表面には画仙紙の他、鳥の子紙や麻紙など多用な支持体が貼られているもの。なお、色紙とはそもそも染紙を意味したが、平安から鎌倉にかけて襖絵や屏風絵に用いられた色紙形が、室町になり次第に料紙として独立したものを指すようになり、イロガミと区別されるようになった。現在では色紙の大きさが、一般に9寸×8寸(約273㎜×約242㎜)である。なお、この規格は大色紙と称されることがある。これは今日あまり用いられることがない小色紙が存在するからである。
軸木 ジクギ
一般に木材を使用した、収納・装飾・鑑賞・補強という目的を兼ね、掛物下部に巻芯となるよう取り付ける部位の名称。軸木の両端には掛物を巻くときの手かけ、および装飾が目的の「軸端(ジクバナ)」を取り付ける。「軸棒」とも「中軸」とも、また単に「軸」ともいう。
軸装 ジクソウ
紙あるいは布帛などを支持体とした本紙を、掛物にまで加工すること。「掛幅装」と呼ぶこともある。ちなみに、巻物では「巻子装」と呼ぶことが普通。また、「幀」が画の掛物を意味するところから、古くは「装幀(ソウトウ)」とも呼んだが、現在、装幀という語は書物表紙の綴じ方、あるいは書物の仕上装飾の意で用いることが普通である。
軸端 ジクバナ
軸木の両端に付けるもので、「軸先(ジクサキ)」、「軸首(ジクシュ)」、「軸頭(ジクガシラ)」ともいう。また、単に「軸」と呼ぶこともある。軸端は掛物を巻いたり展げたりするときの手かけとなる部分で、その装飾に多様な工夫がなされている。
絓 シケ 節のある絓糸を使用して織った平織の後染品。主に軸装用の天地裂として用いる。かつては真綿から繰り出す絓糸で織った安価な平絹だったが、日本での養蚕の退潮に伴い絹糸の供給はほとんど輸入に頼っており、絹糸は供給元より製糸後に出荷されることから、今日ではあえて絓糸をつくってから絓が織られる。したがって、紬と同様、現在ではかえって高価な裂地となっている。なお、絓はこの平絹の称である絓絹を略したものだが、絓とはそもそも蚕繭の外皮を指す。 →絹絓
地貼 ジバリ
本紙を貼る台紙のこと。地貼の用途と効果には◇本紙を大きく見せる、◇一扇に複数の本紙をはり交ぜる、◇大きさがまちまちの本紙を統一する、などが挙げられる。つまり、地貼の意義は地貼寸法を本紙寸法に、だまし絵的に拡大解釈させるところにある。
紙本 シホン
画仙紙・鳥の子紙・麻紙など紙支持体による本紙。→絹本
地文 ジモン
絵緯(エヌキ)を用いずに経糸(タテイト)と地緯(ジヌキ)だけで織り表した文様。これに対し、地糸以外のたとえば金襴などでは平金糸で表す文様を上文(ウワモン)という。
赤銅 シャクドウ
燻(クス)べによって漆黒に色付けする金物の伝統的な色仕上の一。高級なものは、乾燥させた北山杉の葉を燃やした煙で素地を燻べ、これを繰り返すことにより煙の中の脂などを付着させて黒色に着色する。他に、北山杉以外の杉や檜、松の鉋屑も用いる。仕上にはイボタ蝋や胡桃の油を用い、高級品には透漆を引く。なお、赤銅色という表現はこれに根差している。
繻珍 シュチン
繻子組織の地に、地とは別色の絵緯(エヌキ)を使って文様を表した織物。日本で織られるようになった江戸時代以降は、帯や羽織裏、また打掛として多用された。これは、いわゆるサテンのことで、サテンが訛り繻珍となり、さらにこれが訛って「七糸緞」とも呼ばれた。
春慶塗 シュンケイヌリ
まず木胎(白木の塗下地)を染料によって染め、その上に春慶漆(透明漆)を施すもの
蜀江文 ショッコウモン
八角形と正方形からなる構図に、亀甲文・華文・七宝文・龍文などを巧みに充填した文様。なお、名物裂で蜀江錦(ショッコウキン)と称されているものは明時代に織られた緯錦を指し、蜀江文とは本来がこの錦に織り表された文様からの名称。
真の行 シンノギョウ
大和仕立における真の仕立の一つで、お名号・お題目、あるいは集印など、真の仕立の中で最も多く用いる様式。一文字は廻さず、風帯は中風帯。
真の仕立 シンノシタテ
軸装における三大大和仕立の一。仏画(仏像・高僧像・祖師像・曼荼羅など)・お名号・お題目など仏教に関わる書画の軸装で用いる様式。古くは?補(ヒョウホエ)ともいい、今日では一般に仏仕立、あるいは仏表具ともいう。
筋 スジ
表具地と表具地、あるいは表具地と本紙(場合によっては本紙と本紙)の間を、細みの部材で見切るもの。「細見」とも「沈め」ともいい、特に金箔紙や金砂子紙を筋に用いるときには、「細金」または「筋金」と呼称する。
捨貼ステハリ
主に下地改良のために行うベタ貼のこと。捨てベタとも呼ぶ。
砂子 スナゴ
砂子(細工)は金箔や銀箔を箔筒という篩(フルイ)に入れ、撒き散らしながら模様をつくりあげる日本独自の加飾技法。
スペイサー スペイサー
spacer。透明ダストカバーと中縁(あるいは作品)が接しないようにするのが目的の、小さい椽(あるいは枠)。鑑賞の妨げにならないよう通常はカカリよりはみ出さずにつくるもので、多くは椽と共(同じ色・材質)にする。「ガラス押え」ともいう。→入れ子
角金具 スミカナグ
屏風の竪椽と横椽が見合う角に取り付ける金具で、屏風椽の留部分を保護する目的で装飾を兼ねるもの。必ずしも取り付けなくてよい屏風もあるが、屏風の保護と装飾には本来的に欠かせないものである。多様に加飾した金物でつくられ、錺金具(カザリカナグ)として古くから意匠が凝らされてきた。なお、「八双金具」とも呼ぶこともある。
隅丸 スミマル
木材表具地の留(トメ)部分における形状の名称の一。平留による留加工をしたもののうち、外隅は直角だが、内隅にアールをとったもの。なお、日本以外ではあまり見られない留部分の加飾であり、和風表現に適している。
頭切 ズンギリ
最も一般的な円柱形をした軸端。直軸(スグジク)や切軸(キリジク)ともいう。
寸松庵 スンショウアン
大色紙1/4の大きさの小色紙、大きさは4寸5分×4寸。ラインを増やすため、書道用品業界が近年になって商品化したもの。寸松庵色紙ともいうが、この名称はそもそも、京都大徳寺の塔頭、寸松庵が旧蔵していた古筆色紙(4寸6分×4寸2分)に由来するといわれる。
隻 セキ
屏風で、半双を特定するときの呼び名。たとえば半双を「一隻」ともいうことがある。また、一双屏風のうち片側を特定するとき「片隻」とも、あるいは今日では向かって右に立てる屏風を「右隻」、左を「左隻」と呼ぶことがある。なお、隻は双の旧字体「雙」を分解したもの。
双 ソウ
表具では屏風で用いる助数詞で、そもそもはワンセットという意。屏風は一般に、2本でワンセットであり、このとき「一双」というように用いる。なお、1本の場合は「半双」と数える。→隻
創作表具 ソウサクヒョウグ
掛物の様式は大きく大和仕立と文人仕立に分けられるが、この2種の様式群に囚われない自由な様式のものをいう。
草の仕立 ソウノシタテ
軸装における三大大和仕立の一。形体は、行の柱幅を狭くしたものであり、このとき中廻しの柱幅は現在では5分が一般的。 『和漢装?志』に「茶の湯の掛物はこれに極まる。墨跡は猶もちうべき也」とあるように、茶掛の表具の中では最も多く用いる様式である。したがって、茶掛仕立とも茶掛表具ともいう。なお、輪補(リンポ)仕立とも呼ぶことがある。
総縁 ソウベリ
一般に中廻しを取り囲む部位の名称。また、「総地廻し(ソウジマワシ)」ともいうが、中廻しに限らず本紙を取り巻く外縁部を「総地廻」と総称することがある。なお、総縁もしくは総地廻しがあるとき、一般にこれと接する他の表具地(あるいは本紙)との間には筋を入れて見切る。
ダイアパー ダイアパー
diaper(英)。菱形や正方形を充填した、格子を基本とする西洋の幾何学紋様。
台表具 ダイヒョウグ
作品を本紙よりも大きな地紙(台紙)に押し、それを本紙寸法として軸装すること。台張表具ともいう。
宝尽し文 タカラヅクシモン
宝物を象った文を幾種か配したもの。宝尽し文はそもそも、八宝文と呼ばれる仏教の宝物から派生した八吉祥、および八吉祥以外の宝物文(雑宝)を取り混ぜたもので、組合せは必ずしも一定したものではない。また、雑宝のみによる8種の宝物文で構成される雑八宝文、あるいはこれから任意に幾種か選別して配した文様も宝尽し文という。なお、こうした宝物を混ぜあわせて文様化する思想は中国に始まり、宝尽し文が日本では室町時代から流行したといわれている。
溜塗 タメヌリ 漆塗工法の一。赤漆・黄漆・青漆などの彩漆(イロウルシ)で下塗を施したものへ、塗立漆(有油透漆)を塗り放した光沢を有する塗。これには朱漆を使った朱溜・赤溜、弁柄漆を使った弁柄溜、石黄漆を使った京溜などがある。
短冊 タンザク
懐紙(H×W=1尺2寸×1尺6寸)を縦で8裁したもの(H×W=1尺2寸×2寸)。今日では主に絵画用として、広幅短冊(幅2寸5分)もある。「短籍」や「短尺」とも書き、「タンジャク」とも読む。ちなみに、冊とは「かきつけ」を意味する。
中風帯 チュウフウタイ
垂風帯の様式の一。表裂を中廻しと同じ表具地でつくり、裏裂には一般に天地裂と同じものを用いて作ったもの。略して「中風(チュウフウ)」と呼ぶことがある。
中廻し チュウマワシ
一文字および本紙を取り巻く表具地。「ナカマワシ」とも「中縁(ナカベリ、チュウベリ)」ともいい、また単に「中(チュウ)」とも、「廻り」とも呼ぶ。
デッサン額 デッサンガク
水彩画や版画、写真といった薄物作品を額装する際に用いる額。一般に枠・透明ダストカバー・裏板の構造になっている。なお、「水彩椽」や「版画額」と呼ぶこともある。
天地 テンチ
掛物で、中廻しの上下に付ける、中廻しとは別の表具地の名称。様式により、付ける場合と付けない場合がある。上方に付けるものを「天」、下方に付けるものを「地」と呼び、 また天地は単に「上下」ともいう。
透明ダストカバー トウメイダストカバー
ダストカバー(dust cover)とは塵埃よけのことであり、透明のダストカバーとは、ガラス板や透明アクリル板など透明の板状で、本紙および表具地を保護するもの。なお、洋額縁業界ではグレージング(glazing)とも呼ぶ。これはそもそも板ガラス、あるいはその取付けを指す語であるが、今日では透明アクリル板を含む意に押し広げて使用している。
富田雲 トミタグモ
つないだ霊芝雲を斜線状に織り出し、隙間に宝物文を充填した、今日仏仕立の中廻しへ最もポピュラーに用いる文様。富田雲と称するのは、豊臣秀吉の側近であった富田知信が愛蔵していたことから。
共箱 トモバコ
一般に箱書付きの軸箱のことであるが、厳密には作者本人の筆による箱書のあるもの。
取合 トリアイ
部屋と部屋を仕切るための襖。「中仕切(ナカジキ)」や「間仕切(マジキリ)」ともいう。
鳥の子紙 トリノコガミ
表具紙および表装紙としても用いる、表具では極めて汎用性の高い紙。この紙の未晒し(生成り)色が鶏の卵殻のような淡黄色をしていることから名付けられたという。鳥の子紙はもともと雁皮を原料とする紙で中世より漉かれ始めたが、現在では需要に応えるため供給の少ない雁皮(ガンピ)だけでなく、三椏(ミツマタ)・楮(コウゾ)・木材パルプなどでも漉かれている。なお、鳥の子紙には手漉きと機械漉きがあり、手漉きを本鳥(本鳥の子紙)、機械漉きを新鳥(新鳥の子紙)と略して呼ぶことが普通。また、現在の鳥の子紙は一般に三六判(3尺×6尺)だが、他に四六判、五七判、六八判、七九判などの大判もある。
緞子 ドンス
厚地の絹織物。