Q:裏打とは何のために行うのですか?
A:裏打は、紙・布帛・皮革などの裏面へ紙を貼り、強度を高めるために行うものです。このとき同時に、作品のシワを伸ばすので鑑賞にも役立ちます。また、作品によっては透け止めにもなります。
さらに裏打されるものが半紙などの薄ものであれば、裏打紙の表情を転写させる、またこれに用いられた顔料や染料といった色料を固定化・安定化させることも重要な目的です。
Q:裏打には、どんな紙を使うのですか?
A:目的に応じて裏打紙をかえます。たとえば軸装では手漉き和紙の薄いものを使用します。
しかし、刺繍などの作品の裏打には比較的厚い紙を使用します。これは作品の自重に、薄い紙では対応できないからです。このとき薄い紙で何回か重ねて裏打し、厚みを持たせることもありますが、コストがかさむものになってしまいます。
そこで額装を目的とする場合、当社ではたとえば刺繍の裏打にヴァージンパルプ紙を使っています。これは掛物のように曲げ伸ばししない作品では、ヴァージンパルプ紙での裏打のほうが保ちがよいともいわれているからです。
Q:裏打には、どんな糊を使っていますか?
A:当社では、裏打に用いる糊にはすべて日本で古くから使用してきたデンプン糊を使用しています。
化学的に合成された糊はこれまでの使用期間が短く不安があるからというのが、その主な理由ですが、刺繍など木綿地には化学糊では糊染みができやすいという理由もあります。
Q:機械による裏打があると聞きましたが、従来の裏打との違いは?
A:従来の裏打とは、主にデンプン糊を使って行うものですが、機械による裏打とはフィルムのようなシート状の樹脂糊を高熱でプレスして溶かし接着するものです。これは水で剥がすことが難しく、将来的に仕立て直しがきかないものもあります。
また、裏打に使う紙が違います。機械による裏打での裏打紙は洋紙(ロール紙)を用い、従来法では一般に手漉きの和紙を用います。
なお、かたや水を使わない熱圧着、かたや水で濡らして糊付けするといった仕方の違いから、機械打ちをドライマウンティング、従来法をウェットマウンティングと呼ぶことがあります。この「マウンティング」とは裏打という意味です。
Q:二つの裏打の特長はどういったものですか?
A:機械による裏打の大きな特長は短期間で仕上げることができる点です。従来法では乾燥時間を多く必要とするので、たとえば掛物の納期は最低1ヶ月半から2ヶ月は必要です。
しかし、従来法の特長は、何といっても保存性の高い点です。これは裏打で用いる楮を原料とした手漉き和紙の強度が高いためです。また、機械打ちによる裏打の歴史は浅く、経年変化に不安が残ります。
Q:破けない障子紙はありますか?
A:破けにくい障子紙というものはあります。たとえば紙と紙の間に薄い樹脂シートを挟み込んだものがそうです。
ところで、昔から障子には、和紙の中でも特に強い紙が張られてきました。小さい子どもさんがいるならまだしも、障子には手漉き和紙を張られるのが最も良いと思っています。
というのも、障子紙はそもそもその風合いを楽しむものであり、それによって血圧降下作用のあることが今日では知られています。さらに調湿作用、およびアンモニアやホルムアルデヒドといった有害ガスを吸着する働きもあることから、破けにくさよりもこうした機能面を重視されてはいかがでしょうか。
Q:古い着物を何らかの形で、リメイクすることは可能ですか?
A:可能です。たとえば着物をまるごと屏風にする衣裳屏風、また裂けば屏風の大縁にも利用できます。額装では、刺繍や染めによる絵付けされた部分を、洋額や和額、あるいはパネル額などにリメイクできます。
場合によっては、襖に意匠貼りも可能です。さらに洋間などでお楽しみいただけるタピスリーなどにも加工できます。
Q:自分の考えたデザインで表具が可能ですか?
A:もちろん可能です。
ただ、物理的に不可能な場合もありますので、まずはご相談下さい。