Q:額縁の素材にはどういったものがありますか?
A:額縁の素材には大きく分けて木製、金属製、樹脂製のものがあります。
◎木製
洋額、和額ともに最も一般的な素材です。塗装仕上したものと素地仕上のものがあります。
塗装仕上では、さまざまな塗料で塗装しますが、なかには金箔を押す(貼る)豪華なものもあり、特に洋額では彫り(あるいは彫り状)の加飾を伴うものがあります。
また、素地仕上とは木目を見せる仕上げをいいます。これは、手アカなどから保護するためクリアーラッカーなどで仕上塗装することが普通です。
◎金属製
主にステンレス製とアルミ製のものがあります。ステンレス枠は一般にアルミ枠よりも上級品です。アルミ枠の中には印刷した木目柄シートを貼ったものもあります。
ところで、一般にアルミ枠は加工がしやすく、複雑な形状での成形が可能で、デッサン額に用いることが多くあります。というのも、デッサン額はフレーム形状が仕様の大きな要になることが多いからです。
逆に、ステンレス枠は、コストの点からシンプルな形状での成形となるので、多く日本画額の外枠で用います。これは、日本画額では中縁が仕様の中心であるからです。
◎樹脂製
樹脂に色付け、その他の加工をしたもので、仕上がりは木製枠と一見して区別が付きません。軽いのがメリットですが、割れやすいというデメリットがあります。同じ理由で小さな額には向きますが、大きな額には用いません。
Q:どんなものでも額装できるのですか?
A:はい。液体や気体以外のものは、たいてい額装可能なのではと思っています。最近では、お皿やブーケなど立体額装を希望される方も増えています。
Q:額椽には必ずガラスを入れないといけないのですか?
A:ガラス板は作品の保護のため入れることが普通ですが、ガラス板を入れずに額装する場合もあります。
額にはガラス板が付いているものと思われがちですが、ガラス板の代わりに透明のアクリル板を用いることもあります。また、安価な額縁には透明の塩ビシートでこれらの代用にすることもあります。
ガラス板やアクリル板といった額縁の前面を覆うものを透明ダストカバーといいますが、これを用いるのは、一般にカビの食料となる埃が作品かぶらないよう、あるいは手などが直接作品に触れることがないよう、作品を保護するためです。
また、車による排気ガスなどの大気汚染や、タバコのヤニからも作品の変色や劣化を防ぎます。
ただ、このような影響を受けにくい作品であるならば、ガラス板など透明ダストカバーを入れないことも普通です。たとえば作品が陶板やレリーフである場合がそうです。
Q:ガラス板と透明アクリル板はどのように使い分けるのですか?
A:それぞれに長所・短所がありますが、おおむね額装にはアクリル板のほうが適しています。
ガラス板にはさまざまな厚みのものがありますが、一般に額装では最も薄い2㎜厚のものを使用します。この全判の大きさは1219mm×610mm、913mm×813mm、913mm×610mmの3種です。
大型サイズには3㎜厚(最大1829mm×1219mm)を使用することもありますが、重量が大きく額縁の構造によって不向きな場合が多いので、あまり使用しません。
一方、透明アクリル板には製造方法によってキャスト(鋳造)板とロール(押し出し)板があります。ロール板はキャスト板に対し、安価ですが軟らかくて伸縮が激しく、外部からの光が乱反射するなどの欠点があります。
透明アクリル板も一般に2㎜厚のものを使用します。また、大きさは三六判(1800mm×900mm)より販売されていることから、大型サイズには透明アクリル板を用いることが普通です。
さて、下表は普通板ガラスと透明アクリル板(キャスト)の特性の相違を示したものです。
この表からわかるように、透明アクリル板は普通板ガラスに比べると1.軽く 2.衝撃に強く 3.鑑賞しやすく 4.紫外線による傷みが少なく 5.結露しにくいのでカビなどの発生が抑えられるという長所があり、逆に6.軟らかく 7.たわみや伸長が生じやすく 8.帯電のおそれがある、すなわち静電気によって埃が付きやすいという短所があります。
しかし、透明アクリル板はガラス板より多くの点で勝れており、その短所も6.耐擦傷性板(硬く傷つきにくい製品)や、 8.帯電防止板などが開発され短所も改善されつつあります。
ですから、コスト面ではガラス板より若干高くつきますが、アクリル板にはUVカット(紫外線防止)板も販売されており、作品の保護、および割れにくさによる落下時等の事故での安全性という点で、キャストの透明アクリル板の使用が額装には望ましいものとなります。
ちなみに、地震の多い関東では早くから透明アクリル板の使用が主でしたが、関西では廉価であり埃が付きにくいという特長によって普通板ガラスの使用が主流でした。
しかし、阪神・淡路大震災以降は関西でも透明アクリル板の需要が増しています。
◎普通板ガラス
比重:2.5 強度比:1 可視光線透過率:90% 紫外線不透過率:小
結露:大 硬度:大 伸縮率:小 帯電:無
◎透明アクリル板
比重:1.19 強度比:10 可視光線透過率:93% 紫外線不透過率:大
結露:小 硬度:小 伸縮率:大 帯電:有
Q:額椽に入っている紙マットとは何ですか?
A:紙マットとは、作品とガラス板(あるいはアクリル板)との間に入れる約1㍉~3㍉の紙ボードをいいます。この紙ボードを作品の大きさに合わせて窓抜き加工します。そして、これは真っ直ぐに切るのでなく、通常は作品へ影が差さないよう45度の角度を付けて切り抜きます。
多くの種類がありますが、主に用いるのはベージュ系のオフホワイト色です。このオフホワイトとは白に近い少し色味がかかったものをいいます。
また、紙マットには粗悪なボール紙(酸性紙)に化粧貼りしたものもありますが、当社では中性紙を使用しています。中性紙を使用することによって作品の酸性化を防ぎます。
Q:額縁へはマットを必ず入れるものなのですか?
A:一般にマット(紙マット)を必要とするのは、シート状作品です。
シート状作品の中でも、紙マットを入れず直椽(ジカブチ)仕様とすることがありますが、版画類だけは必ず紙マットの使用をお薦めします。
ところで、紙マットは装飾のためだけに入れるのではなく、作品とガラス板などを離すために入れるものです。作品とガラス板を離すことによって、外気の影響を受けにくくする、たとえば結露などの被害から作品を守ることができる、またガラス板と作品の密着による作品へのダメージを避けることができる、などといった効用があります。
Q:額椽の飾りかたは?
A:額を飾るときに注意したいことは、つねに目線を考慮するところです。つまり、鑑賞しやすい高さに取り付けることが肝要です。たとえば洋間なら腰高のテーブルがある部屋とソファが設置してある部屋とでは、自ずと取り付け位置が異なります。また、高いところに掛けるときは、額受けを用い、傾けて取り付ける必要があります。これは土壁の和室でも然りです。
ところで、取り付けに好ましくない壁はあります。それは外壁側の壁です。というのも、外壁側の壁は外気の影響を受けやすく、湿気でカビが生じやすいからです。なお、これも内装がしっかりしておれば、さほど問題はありません。
Q:額椽の取り付け方を教えてください。
A:額縁の取付は相手次第です。つかり、壁構造によって金具を変える必要があります。
今日、一番多いのは中空壁です。中空壁用には、約20㎏までの重量がある額装品に対応できる金具があります。その他、コンクリートやALC壁用の金具もありますが、重量のあるものは専門家に任された方がよいでしょう。
ところで、当社では額縁の取付のみのサービスも行っています。