解説文中の表具関連業界に特有の符丁や用語は、ご理解の一助となるよう別に説明しています。これも当該項目をクリックして、ご覧下さい。

作品 欧風刺繍作品。
仕立 デッサン額タイプの扇形組額、新装。
ご依頼主 K氏(大阪府富田林市)
 時計の文字盤のように見えますが、本作は扇形の四つの額を組み合わせたものです。1点1点別々に掛けることもできます。
 ご依頼主のご要望で製作しましたが、このように組み合わせたとき、外枠と十文字に見える内桟が同じような太さに見えるようにと、所望されたところに苦労しました。
というのは、あまり十文字を太くすると、組み合わせたときに一体感が失われ、またせっかくの作品が十文字部分で大きく失われるからです。
 逆に、細すぎると構造が保たなくなり、またロータス文を構成の中心に据えた、やや重厚な作品内容との釣り合いがとれなくなります。
 なお、アール部分のみ太くするという手もあったのですが、そうすると今度は個別に掛けたときのバランスが悪くなります。
 こうした構造を可能にするため、本椽を諦め、外枠は板物集成材を切削加工して作り、これをオーク色に塗装しました。

作品 欧風刺繍作品。
仕立 デッサン額、新装。
ご依頼主 K氏(大阪府富田林市)
 ご依頼主のご要望により、ダブルマットで額装しました。ワンちゃんの形状に沿うよう、白い上マットを刳り抜き、作品とマット刃先の間には薄紫色のアンダーマットを配しています。
 マット付きの洋額装では、マット幅(マットマージン)の適切な設定が重要で、作品を生かすも殺すも、これにかかわることが多くあります。
 しかし、本作はマットの外寸が作品寸法そのものとなっており、他のマット付き額装とはこの点で大きく異なります。
 さて、ご依頼主は既製品を使ってお安く仕上げたいとのご意向でした。そこで、既製サイズに合わせるだけでなく、できるだけ小さくなるようデザインしました。といいますのも、マット外寸を大きくとれば、右上と左下の余白部分が広くなりすぎ、鑑賞の上で作品がぼやけてしまうからです。
 白いフレームを選定したのは、逆に今度は作品へ広がりが欲しいからです。これに濃い色付けしたフレームを配すると、きっと息の詰まった感じがするでしょう。
 フレームに幅の広いものを用いたのも同じ理由です。作品寸法に合わせ、マットやライナーを付けない額装を当社では「直椽」と呼んでいます。本作は直椽ではありませんが、マット外寸を作品寸法にみなすという、効果の上では直椽に通じるものがあります。この直椽仕様の額装で、一般に幅の狭いフレームを用いると仕上がりが貧弱に映ります。こうしたこともフレーム幅に広いものを選んだ理由です。
 なお、モダンイメージの作品には細いフレームを選定することもあります。

作品 欧風刺繍作品。
仕立 デッサン額、新装。
ご依頼主 K氏(大阪府富田林市)
 お客様のご要望により、マットを3枚使ってデザインマットにしました。デザインマットという用語は、あまり一般的なものではありませんが、写真のようにただ単に四角に窓抜きするのではなく、曲線を併用し自在にマットをカットするなどして、作品を引き立てる装飾とすることを業界ではこう呼んでいます。
 本作では、まず一番上のマットのコーナーを、内側にアールをとったラウンドコーナーにしました。次のマットと3番目のマットは作品に合わせて楕円に刳り貫いています。これをオーバルダブルマットと呼んでいます。
 どのような場合に、こうしたデザインカットを施すのでしょうか。この作品を例に取り上げて、少し解説してみます。
 まずオーバル(楕円)を提案させていただくときは、最初から意図して作品が制作される場合もありますが、作品の四隅に大きな空間が存在し、間の抜けるような場合です。そして、この作例では四角いフレームに収めていますので、どうしても四隅が寂しくなります。そこで、内に向かったラウンドコーナーを付加させることによって、これを補ってやる、というのがこうしたデザインの根拠です。
 和と洋の違いは、こうしたデザインにも表れます。つまり、西洋絵画や中国作品は画面の隅々まで表現され、余白を嫌います。これに対し、和的な作品では余白(および背景の白地)も楽しむことがあります。
 なお、「白紙も模様のうちなれば、心にてふさぐべし『土佐光起著、本朝画法大伝;(1690年)』」とあるように、大和絵は背景の白地をも模様とする通念があり、事物の一部を描くことによって背景を仮想させる絵画手法が伝統的にあります。
 この額装の場合も、洋的な主題であるからこそコーナー余白部分が寂しくなるのであり、ここに飾りを入れることによって調和が生まれます。逆に、これが和的な本紙である場合、隅に飾りを入れるというより、表具地の文様で補う、あるいは表具地自体の持つ素材感で勝負するときもあります。
 ところで、本作では、クラシックな感じに仕上げて欲しいとのご要望でしたので、マットにはダークなブラウンマットを使用しました。そして、これを支えるため、またクラシックなイメージを与えるため、デコラティブで古美の施されたモールディングフレームを選定しています。

作品 板絵。
仕立 油彩額、新装。
ご依頼主 J寺(大阪市天王寺区)
 額装されていない状態で購入された、釈迦涅槃図の背景へ経がしたためられた作品。寺院本堂に飾りたいとのご意向です。こちらのご寺院へは以前何度か訪問したことがありますので、イメージはだいたい掴んでいます。その寺院本堂へは、他の荘厳を考慮すると、フレームに重厚なものを選定する必要があります。
 さて、テーマは古典的なものですが、やや軽みが感じられる本作品を設置予定場所に調和させるのは、重厚さに留意しつつ本作の持ち味を活かすようにしなければなりません。
 そこで、太くて黒っぽいシンプルなフレームを中縁なしで使用するといった基本方針で額装の計画を開始しました。それは中縁を入れると、どうしても重厚さがいや増すからです。
 しかし、あまりフレームが黒いと作品のイメージを損ねてしまうことになるので、黒に近い濃茶系の色目を選定の基準としました。さらにフレームの強さを緩和させるため、フレームと作品との間に面金ライナーを入れる必要もあります。なお、これには作品と透明アクリル板が接しないようにする目的もあります。
 こうした方針で額装したのが、写真のフレームです。このフレームは油彩画用の本椽で、オイルライナーを外した仕様で製作しました。

 

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