2018.02.16
清華堂のしきたり学
掛物に関するQ&A

Q:掛物にできない作品はありますか?
A:あります。巻けないような作品、巻くと癖になって元に戻すことができない作品、巻くには巻けるが顔料などが剥がれてしまうおそれのある作品などがそうです。
 ただ、厚紙は巻くとヨコ折れが生じますが、はいで薄くすることが可能であるものであれば、厚紙作品でも掛物にすることは可能です。
 また、掛物を仕立てる際には、水分を与えることが普通ですので、水で濡らすとダメになってしまうような作品は基本的には掛物にできません。

Q:掛物の上についている凧足状のものは何ですか?
A:風帯(フウタイ)といい、あくまで装飾のために付けるものです。ただ、様式によって付けるもの、付けてはいけないものがあります。

Q:仮表装とは何ですか?
A:主に裏打前の作品を仮巻に巻き込んだものをいいます。また、裏打のみ行って仮巻にしたものを指す場合もあります。
 なお、仮巻とは、一枚の紙でつくられた掛物状の安価な軸をいいます。

Q:掛物は床の間以外に掛けてはいけないのですか?
A:本来はそうです。掛物は床の間で鑑賞するようデザインされ、構造も床の間に掛けることが前提になっています。

Q:掛物の紐の巻き方を教えてください。
A:以下の図をご参照下さい。紐の巻き方には「綾巻き」、「平巻き」がありますが、これは最も一般的な3巻での「平巻き」による巻き方を図示するものです。
掛け軸_img
Q:掛物はどのように保管すればよいのですか?
A:まずは、桐箱に入れることです。掛物は湿気を嫌います。というのも、カビや害虫は湿度の高いところを好むからです。ですから、桐箱に納めるときも、よく晴れた日が2~3日続いた後、特に湿度の上昇する夕刻を迎える前に行います。
 なお、このとき掛物に付いた埃はカビの餌となることから、本紙(作品部分)を傷つけないよう注意しながら充分に払っておくことが必要です。
 また、桐箱にはパラゾールなど市販の防虫剤で構いませんので、入れておくと良いでしょう。
 つぎに、保管場所です。押入なら上部、また1階よりも2階といったご家庭でも湿気の少ないところで保管してください。というのも、湿気は下方でよどむからです。
 さらに望ましいは、ホームセンターなどで販売されている簾の子などを下に敷くことが良いでしょう。そうすることで空気の還流が起こるため、掛物のみならず収蔵品の保存に大きく役立ちます。
 そして、年に一回で充分なので、虫干しをしてください。これも収蔵するときと同じように良く晴れた日が続くときに行うのがベストです。特に日本では11月3日(文化の日)前後が適しています。

Q:機械打ちの掛物があると聞きましたが、どうやって見分けるのでしょう?
A:光にかざして見れば一目瞭然です。機械で行ったもの(ドライマウンティング)はロール紙を用いることから裏打紙に接ぎ手がなく、従来法によるもの(ウェットマウンティング)はところどころに紙を接いだ跡が見られます。
 ちなみに、紙を接ぐことは力を分散させることに役立ち、結果として作品の保存性の良さを生み出すことになります。このため、従来法による掛物のほうが優れています。
 また、当社でも行っている特に古法による軸装では、裏打ちするもの・されるものの一体化を目的として重い刷毛を打ち込んで裏打を行うことから、裏面には細かいクレーターのような跡が見られます。これも簡単な見分け方の一つです。
 なお、打ち込み痕が細かいほど丁寧な仕事であることを示しています。

Q:掛物を飾るとき、下に房の付いたオモリのようなものを取り付けますが、これは何のためにさげるのですか?
A:これは「風鎮(フウチン)」といいます。”風を鎮める”と書くように、掛物が風であおられることによって傷つくことを防ぐために取り付けます。

Q:風鎮は必ずぶら下げる必要のあるものですか?
A:本来は書院飾り(真の床の間の飾り)といわれるものですが、風鎮の歴史は浅く、床飾りとして必ずしも要るものではありません。
 特に、一般のご家庭では一つの掛物を長期間かける傾向にあります。このような場合には、むしろ風鎮は余計な重量を掛物に与えるという点で保存上の弊害となります。また床壁が風鎮によって削られ、傷むこともあります。
 ただ、今日では一般に、風鎮は飾り物の一つとして、床の間のインテリアには欠かすことのできないものと考えられており、意匠的にも優れているものです。そのため、掛物を頻繁に掛け替える習慣のあるご家庭では風鎮の使用をお奨めします。
 なお、茶室では風鎮を使用しません。